アトリエにて
アーティスト編・2
「アレックスさん」
*画家
*極東美術館/ゼネラル・マネージャー
「アトリエ」
「タカハシさん、私のアトリエを見に来ませんか?」
「はい、是非伺いたいです。」
「それではついて来て下さい。」
と、さっそく美術館から外へ出て行くアレックスさん。(一体彼のアトリエはどこにあるんだろう?)と思いつつ、彼の後についていきます。
美術館正面入り口の横にある、地下へ通じる階段を下りて行くと・・・
階段を下り扉を開けると、すぐそこがアトリエでした。
「ここが私のアトリエです。どうぞ自由にご覧になって下さい。」
壁に立て掛けてある大きな作品は「ハバロフスクの街並」が描かれています。しかしどこか”心象風景”のような不思議な空気が漂っています。
机の上に目を向けると、無造作に置かれた何枚もの作品が・・・
作品のモチーフとなる物すべてに、アレックスさんの温かい眼差しが感じられる素晴らしい作品ばかりです。
とても美しいです。
周りに貼付けてあるのはトロリーバスの乗車券でしょうか。
「タカハシさん、ハバロフスクへようこそ!」
「記念に私の画集を差し上げます。」
「画集」
「息子」
画集の中に「ギターを抱えた少年(青年)」の絵が何枚かあります。その絵を見ている私にアレックスさんが言いました。
アレックスさん:「これは私の息子です。」
私:「そうなんですか。息子さんは今どうしていますか?」
アレックスさん:「彼は今もギターを弾いています。」
私:「と言うと・・・プロフェッショナルという意味ですか?」
アレックスさん:「はい、そうです。ロックバンドのギタリストです。」
アレックスさんは少し照れくさそうにしながらも、とても嬉しそうに話してくれます。
そして”ゴソゴソ”と鼻歌まじりに何かを探し始めました。
「そう、これこれっ!」
DVDを手にしています。息子さんのバンドのPVです。
TV画面を嬉しそうに見ている姿は、”画家・アレックス”ではなく”息子想いの父親”になっていました。またそんな姿を隠そうとしないところが素敵です。
後ろでギターを弾いているのが息子さん。
アレックスさんは、素晴らしい画家で、素敵な父親でもありました。
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